働くだけでは損をする?格差の必然「r>g」

ゴールド稼ぎ

「r>g」。たった3文字の不等式が、世界中で議論を巻き起こしました。フランスの経済学者トマ・ピケティが2013年に発表した著書『21世紀の資本』で示されたこの式は、現代の格差問題の本質を鮮やかに説明するものです。難しそうに聞こえますが、内容を理解すると「だから新NISAで投資をしなければならないのか」と腑に落ちるともいえるテーマです。私自身、この考え方に触れてから投資を始め、7年が経ちました。理屈ではなく、実感としてr>gの意味が体に染み込んできています。


r>g とは何か

まず式の意味を整理しましょう。

r(return)=資本収益率。 お金がお金を生む速度です。株式・不動産・債券などの資産を持っていると、それが生み出すリターンの割合を指します。歴史的に年率4〜5%程度とされています。

g(growth)=経済成長率。 国全体の経済が成長する速度です。賃金の上昇はこの経済成長に連動します。先進国では近年1〜2%程度にとどまることが多い。

r>g とは、「資産が生むリターンは、経済成長(賃金上昇)を常に上回る」という意味です。

言い換えれば、働いて稼ぐより、資産を持って増やす方が、富の増加スピードが速いということです。


この式が示す「格差の必然」

ピケティはこの式を使って、こう主張しました。

資産を持つ人(資本家)の富は、r(資本収益率)のスピードで増え続けます。一方、資産を持たず労働だけで生きる人の収入は、g(経済成長率)のスピードでしか増えません。r>gである限り、この差は時間とともに広がり続けます。

つまり格差は偶然でも一時的なものでもなく、資本主義の構造から必然的に生まれるというのがピケティの主張です。

実際、近年の日本でも実感している方は多いでしょう。賃金はなかなか上がらないのに、株式市場は長期的に右肩上がりを続け、都市部の不動産価格は上昇しています。資産を持つ人と持たない人の間に、じわじわと差が開いていく感覚。r>gはその現象の説明です。


「労働だけ」では追いつけない時代

日本は長らく「まじめに働けば報われる」という価値観が根付いてきました。しかしr>gという構造の中では、労働収入だけで資産家に追いつくことは、数学的に難しくなっています。

たとえば、年収500万円で働く人が毎年50万円を貯蓄したとします。一方、1億円の資産を持つ人がr=5%で運用すると、何もしなくても年間500万円の収益が生まれます。働く人の1年分の貯蓄を、資産家は1年間で運用益として得てしまう。

これは個人の努力や才能の問題ではありません。構造の問題です。

だからといって、働くことを諦める必要はありません。しかしこの構造を理解したうえで、「自分も資本の側に立つ」という発想を持つことが、現代を生きるうえで非常に重要になります。


「資本の側に立つ」とはどういうことか

難しく考える必要はありません。株式・不動産・債券・事業などの資産を持ち、rの恩恵を受ける側に回ることです。

一般の会社員でも、これは十分に可能です。現に私もそうです。インデックス投資信託を毎月積み立てることは、世界中の企業の「資本」に参加することを意味します。オルカン(全世界株式)やS&P500に積み立てるということは、世界の経済成長とともにrの恩恵を受ける仕組みに自分を乗せることです。


新NISAはr>gへの「民主化」

かつて、資本の恩恵を受けられるのは富裕層だけでした。まとまった資産がなければ、rの恩恵を受ける入り口にすら立てなかった。

しかし今は違います。月100円からインデックスファンドを買える時代です。新NISAの非課税枠を使えば、得た利益に税金もかかりません。

新NISAとは、r>gの構造に、誰でも参加できるようにした仕組みとも言えます。使わない手はありません。

ピケティ自身は、r>gの格差拡大に対して累進課税や富裕税を解決策として提唱しました。それは社会・政策レベルの話です。しかし個人レベルでできることは、資本の側に早く立つこと。そのための最良のツールが、新NISAとインデックス投資です。


時間こそ最大の武器

r>gの恩恵を最大化するのは、時間です。

rが5%であれば、資産は約14年で2倍になります(72の法則)。これを20年・30年と続けると、複利の効果で資産は驚くほど膨らみます。一方、始めるのが10年遅れると、その10年分の複利が丸ごと消えます。

「若いうちはお金がない」という感覚は自然ですが、少額でも早く始めることの意味はr>gの文脈で考えると明確です。月1万円でも、20代から始めるのと40代から始めるのでは、老後の資産に数百万円以上の差が生まれます。


まとめ

  • r>g とは「資本収益率(r)は経済成長率(g)を常に上回る」というピケティの式
  • 資産を持つ人の富は働く人の収入より速く増える。格差は資本主義の構造から生まれる
  • 「労働だけ」では構造上、資産家に追いつくことは難しい
  • 個人レベルの対応策は「自分も資本の側に立つ」こと——インデックス投資がその入り口
  • 新NISAはr>gの恩恵を、誰でも非課税で受けられるようにした仕組み
  • 時間が最大の武器。少額でも早く始めることが、長期的に大きな差を生む

r>gは、格差を嘆く式ではありません。「ならば自分も資本の側に立とう」と行動するための、道標です。


※トマ・ピケティ『21世紀の資本』(みすず書房)を参考にしています。

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